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弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

代理人からマイナンバーを受け取る際の本人確認措置の法律解説

マイナンバーを代理人から受け取る際の本人確認措置の法律を解説したいと思います。
前に似たような解説を書いた気もしますが、具体的事例に即さずに、法律を純粋に解説していきたいと思います。


代理人から受け取る場合は、以下の3種類の書類が必要です。


(1)代理権の確認書類(施行令12Ⅱ①)*1
(2)代理人の本人確認書類(施行令12Ⅱ②)*2
(3)本人の番号確認書類(施行令12Ⅱ③)*3



(1)代理権の確認書類

ポイントが2つあります。
1つは、法定代理人任意代理人かで書類が分かれます。
2つめは、個人識別事項が記載されていることが必要です。

まずポイントの1つ目ですが、法定代理人とは、本人が未成年者の場合の親、本人が成年被後見人の場合の成年後見人等をいいます。夫婦は法定代理人ではありませんので、任意代理人になります。

法定代理人である場合には、戸籍謄本その他その資格を証明する書類が必要です(施行規則6Ⅰ①)。

任意代理人である場合には、委任状が必要です(施行規則6Ⅰ②)。委任状とは、「私は、夫の内閣太郎に、年金の手続及びそれに伴うマイナンバーの利用・提供等の取扱いを委任します。」とかって書いてあって、「私」という本人の署名・押印等がある書類のイメージです。


ただ戸籍や委任状以外でも、税務署とかハローワークとかが適当と認める書類なら可とされています(施行規則6Ⅰ③)。
税務署は、国税庁告示で、以下の2つのものを認めています。
(A)本人の署名押印&代理人の個人識別事項の記載及び代理人の押印があるもの(告示12)
(B)個人番号カード、運転免許証、旅券その他これに類する書類で、個人識別事項の記載があるもの(告示12)

Aは委任状を簡単にしたパターンですね。
Bは健康保険証でも可とされています。

厚労省告示はまだ出ていませんので、わかりませんね。
今の時点で、税も社会保障も同一の書類にしたいという場合は、戸籍か委任状が良いようにも思います。


なお、代理人が法人の場合は、これらの書類に法人の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地が記載されていなければなりません(施行規則6Ⅱ)。



ポイントの2つめです。個人識別事項とは何でしょうか。これは氏名&生年月日か、氏名&住所をいいます。戸籍の場合は、これが記載されているかと思いますが、委任状等の場合も代理人の個人識別事項の記載が必要ということです。


後付け加えると、電話特例が認められています(施行規則9Ⅲ)。本人確認の上特定個人情報ファイルを作成している場合は、本人及び代理人しか知り得ない事項その他の個人番号利用事務実施者が適当と認める事項の申告を受けることにより、代理人であることを確認することができます。本人と代理人の関係、口座番号(本人名義に限る。)、直近の取引年月日等の取引固有の情報等のうちの複数の事項とのことです。


まとめ

  • 親なら戸籍、夫婦なら委任状
  • ただし、税務署提出手続については、戸籍・委任状の代わりに、本人の個人番号カード、健康保険証、パスポート、運転免許証などでも可


(2)代理人の本人確認書類

認められる書類は、次の通りです。

  • 個人番号カード(施行規則7Ⅰ①)
  • 運転免許証(施行規則7Ⅰ①・1Ⅰ①)
  • 運転経歴証明書(交付年月日が平成二十四年四月一日以降のものに限る。)(施行規則7Ⅰ①・1Ⅰ①)
  • 旅券(施行規則7Ⅰ①・1Ⅰ①)
  • 身体障害者手帳(施行規則7Ⅰ①・1Ⅰ①)
  • 精神障害者保健福祉手帳(施行規則7Ⅰ①・1Ⅰ①)
  • 療育手帳(施行規則7Ⅰ①・1Ⅰ①)
  • 在留カード(施行規則7Ⅰ①・1Ⅰ①)
  • 特別永住者証明書(施行規則7Ⅰ①・1Ⅰ①)
  • 次のうちの2種類(施行規則9Ⅰ)
  • (★2)適当と認めるもの(施行規則7Ⅰ②)*4
  • 税理士特例あり(施行規則9Ⅱ)
  • (★3)電話の場合(施行規則9Ⅲ)
  • (★4)雇用関係統特例(施行規則Ⅳ)*5


但し、代理人が法人の場合は、上記ではなく、登記事項証明書その他の官公署から発行され、又は発給された書類及び現に個人番号の提供を行う者と当該法人との関係を証する書類その他これらに類する書類であって個人番号利用事務実施者が適当と認めるもの(当該法人の商号又は名称及び本店又は主たる事務所の所在地の記載があるものに限る。)の提示を受けなければなりません(施行規則7Ⅱ)。


★1の適当と認めるものの解説をしたいと思います。
これは、★2と違い、2種類必要なものです。★1の中でもいいし、健康保険証とか年金手帳とかと合わせてでもよいです。
税務署は、国税庁告示で、以下の4つのものを認めています。
(A)写真なし身分証明書等(告示15)
(B)国税等の領収証書等(告示15)
(C)写真なし公的書類(告示15)
(D)本人交付用税務書類(告示15)


Aは写真のない学生証、身分証明書、社員証、生活保護受給者証、恩給等の証書等が挙げられています(http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/kokuji/0015015/gutairei.htm#a12-1)。

Bは国税地方税社会保険料、公共料金の領収書、納税証明書が挙げられています(同HTM)。

Cは印鑑登録証明書、戸籍の附票の写し(謄本若しくは抄本も可)、住民票の写し、住民票記載事項証明書、母子健康手帳が挙げられています(同HTM)。

Dは源泉徴収票(給与所得の源泉徴収票、退職所得の源泉徴収票公的年金等の源泉徴収票)、支払通知書(配当等とみなす金額に関する支払通知書、オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書、上場株式配当等の支払通知書)、特定口座年間取引報告書が挙げられています(同HTM)。


★2の適当と認めるものの解説をしたいと思います。
税務署は、国税庁告示で、以下の4つのものを認めています。
(A)税理士証票(告示13)
(B)写真付身分証明書等(告示13)
(C)写真付公的書類(告示14)
(D)符号(告示14)*6


Aは税理士さん以外は関係ありませんね。

Bは、写真付学生証、写真付社員証のほか、船員手帳、海技免状、狩猟・空気銃所持許可証、宅地建物取引主任者証、電気工事士免状、無線従事者免許証、認定電気工事従事者認定証、特種電気工事資格者認定証、耐空検査員の証、航空従事者技能証明書、運航管理者技能検定合格証明書、動力車操縦者運転免許証、教習資格認定証、検定合格証(警備員に関する検定の合格証)等とされています(http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/pdf/kakunin.pdf)。

Cは戦傷病者手帳が例として挙げられています(同PDF)。

Dは暗証番号による認証、生体認証、2次元バーコードの読取りが例として挙げられています(同PDF)。


★3の電話の解説をしたいと思います。

本人確認の上特定個人情報ファイルを作成している場合は、本人及び代理人しか知り得ない事項その他の個人番号利用事務実施者が適当と認める事項の申告を受けることにより、代理人の身元確認をすることができます。本人と代理人の関係、口座番号(本人名義に限る。)、直近の取引年月日等の取引固有の情報等のうちの複数の事項とのことです。

★4の雇用関係等の解説をしたいと思います。

代理人が社員であったりして、人違いがないと会社が認める場合には、代理人の身元確認書類は不要です。


なお、(2)でも基本、(1)の個人識別事項(氏名&住所又は氏名&生年月日)が記載されていないといけません。


まとめ

  • 代理人が社員等で人違いが明らかにない場合は、不要。
  • 写真付身分証明書か、写真なし身分証明書2種が基本。


(3)本人の番号確認書類

認められる書類は、次の通りです。

  • 本人の個人番号カード(施行規則8)
  • 本人の通知カード(施行規則8)
  • 本人の住民基本台帳法第十二条第一項に規定する住民票の写し又は住民票記載事項証明書であって、氏名、出生の年月日、男女の別、住所及び個人番号が記載されたもの(施行規則8)
  • 写し可(施行規則8)
  • J−LISから機構保存本人確認情報をもらう(施行規則9Ⅴ①)…ただし、会社はもらえない。公的機関に限る。
  • 住民基本台帳を確認(施行規則9Ⅴ②)…ただし、会社はできない。住所地市町村のみ。
  • 本人確認の上特定個人情報ファイルを作成している場合には、当該特定個人情報ファイルに記録されている個人番号及び個人識別事項を確認する(施行規則9Ⅴ③)
  • (★5)官公署又は個人番号利用事務等実施者から発行され、又は発給された書類その他これに類する書類であって個人番号利用事務実施者が適当と認めるもの(本人の個人番号及び個人識別事項の記載があるものに限る。)の提示を受ける(施行規則9Ⅴ④)


★5ですが、税務署提出手続の場合は(国税庁告示18)、源泉徴収票とか、自身の個人番号に相違ない旨の申立書とか、国外転出者に還付される個人番号カード又は通知カードで可です(http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/pdf/kakunin.pdf)。


まとめ

  • 個人番号カード、通知カード、個人番号付きの住民票が基本


(4)最後に本当のまとめ

長くなりましたが、最後に本当にまとめると、よくあるパターンは、

*1:個人識別事項が記載された書類であって、当該個人識別事項により識別される特定の個人が本人の依頼により又は法令の規定により本人の代理人として個人番号の提供をすることを証明するものとして主務省令で定めるもの

*2:前号に掲げる書類に記載された個人識別事項が記載された書類であって、写真の表示その他の当該書類に施された措置によって、当該書類の提示を行う者が当該個人識別事項により識別される特定の個人と同一の者であることを確認することができるものとして主務省令で定めるもの

*3:本人に係る個人番号カード、通知カード又は前項第一号に掲げる書類その他の本人の個人番号及び個人識別事項が記載された書類であって主務省令で定めるもの

*4:官公署から発行され、又は発給された書類その他これに類する書類であって、令第十二条第二項第一号に掲げる書類に記載された個人識別事項が記載され、かつ、写真の表示その他の当該書類に施された措置によって、当該書類の提示を行う者が当該個人識別事項により識別される特定の個人と同一の者であることを確認することができるものとして個人番号利用事務実施者が適当と認めるもの

*5:個人番号利用事務等実施者は、本人の代理人から個人番号の提供を受ける場合であって、その者と雇用関係にあることその他の事情を勘案し、その者が令第十二条第二項第一号に掲げる書類に記載されている個人識別事項により識別される特定の個人と同一の者であることが明らかであると個人番号利用事務実施者が認める場合には、令第十二条第二項第二号又は第七条第二項に掲げる書類の提示を受けることを要しない。

*6:個人番号利用事務等実施者が発行した書類であって識別符号又は暗証符号等による認証により当該書類に電磁的方法により記録された個人識別事項を認識できるもの(提示時において有効なものに限る。)