ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

個人情報保護条例のうち変わった規定ぶりのもの

個人情報保護条例を見ていたところ、あまり見慣れない規定ぶりのものを見つけたら、ここに備忘的に書いていきたいと思います。
特に特別だなと思うものには★をつけます(但し、私の感覚的に「見慣れないな」と思うというにとどまり、もしかしたら数百の条例でそういうものがあるのかもしれません。あくまで個人的感覚ですので、あしからず。)。

  • 阿南市
    • 開示請求の対象が「個人データ」(14条1項)
    • 開示請求の対象から、個人情報登録事務対象外を除く(14条1項)
    • 法定代理人による開示請求は本人請求が困難な場合のみ(14条2項)
  • 庄原市
    • 開示(14条)、訂正(15条)、削除(16条)、中止・削除(17条)、一時停止(18条)という規定ぶり
  • 当麻町
    • 開示(13条)、訂正(14条)、中止(15条)という規定ぶり
    • 一部の規定を中止請求事由とするのではなく、条例中のどの規定に反しても中止請求ができる(15条)ので、消去はできなくともこの点で行個法より保護に厚い
  • 羽咋市
    • 利用目的の特定義務がなく、かつ定義なく使われている(7条など)。ただし個人情報を取り扱う事務の目的の明確化義務は課せられている(6条)。
    • 遺族による死者の個人情報の開示請求について明示(14条3項)していて、よい。
  • 美濃市
    • 保有制限を「実施機関は、個人情報の取扱いをする場合は、所掌事務及び権限に関する事務の目的達成に必要な最小限の範囲内で行わなければならない。」としている(6条1項)。非常に珍しいパターン。
    • 保有制限に伴い利用制限も「所掌事務及び権限に関する事務の目的達成に必要な範囲内」を原則としている(9条1項)。
    • 代理人請求のパターンが非常に珍しい。以下の代理人請求が認められている(16条2項)。
      • (1) 未成年者又は禁治産者成年被後見人法定代理人→開示、訂正、削除、目的外利用若しくは外部提供の差止め又は利用停止の請求
      • (2) 任意代理人→目的外利用若しくは外部提供の差止め又は利用停止の請求
      • (3) 身体等の障害により直接開示等の請求が困難な者で審査会により認められた代理人→開示、訂正、削除、目的外利用若しくは外部提供の差止め又は利用停止の請求
  • 珍しい規定ぶりである。
  • 占冠
    • 削除と消去をかき分けず、不適切な取扱いで削除請求可としている(14条2項)。
  • 川越町
    • 開示(13条)、訂正(21条)、削除(22条)、利用の停止又は提供の停止(23条)、是正の申出(26条)という規定ぶり
    • 削除と消去をかき分けていない
    • ★削除・利用停止のほかに是正の申出制度を設けていて、保護に厚い
  • 館林市
    • ★法令等に基づく場合でも電子計算機の結合を制限し、例外なく、「審査会の意見を聴いて、実施機関が、公益上必要があり、かつ、個人の権利利益を侵害しないと認めるとき」以外は、結合を制限(10条)。
    • 任意代理人による請求を認めている(19条、施行規則8条2号イ)。
    • 保有個人情報の概念なし
    • 開示、訂正、削除、利用の停止又は提供の停止という規定ぶり
  • 佐渡市
    • ★個人情報取扱事務の登録が、首長登録ではなく、審議会に諮問の上審議会登録になっていて(7条)、保護に厚い
    • 個人情報保護管理者を定める義務あり(10条1項柱書)
    • 正確性確保が努力義務ではなく義務(10条1項2号)
    • ★廃棄義務(10条2項)
    • ★訂正・利用停止請求を受け付けてから決定を行うまでの間の保有個人情報の利用・提供禁止(25条)
      • 利用・提供禁止とはすごい。