ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

Google検索予測差止仮処分

グーグルの検索予測機能に係る表示差止の仮処分が認容されました。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20120325k0000m040095000c.html


グーグルの検索予測は便利ではあるけれども、いったん被害を受けると被害がどんどん拡散していくので、差止は認められてしかるべきだと思います。


昔でいう「人のうわさ」は時間の経過とともに忘れられていくところがありますが、
デジタル情報の場合は、削除されるか、別の情報で埋もれない限り、忘却されることがない。

この検索予測は、そのデジタル情報の特徴をさらに強化するものだと思います。
別の情報で埋もれないどころが、より多くの人をそちらに誘導していく機能であると。
その検索ワードを思いつかない人に対しても、語を入れたらそちらに誘導していくわけで。


知りたい人が必要な情報を素早く得られるということは重要だけれども、
何もかもが忘却されないというのも、おかしな社会かなと思います。


外国ではright to be forgotten(忘れてもらう権利)*1の議論も進んでいます。



ITの「ツールの便利さ」と、「人としての生活」が両立できる方向を目指していくべきだと思います。


ITは、たとえるなら、一昔前の産業と公害のようなものかもとも思いました。
産業発展によって所得水準も上がり、国も国民も豊かになって、便利な生活を享受できる一方で、公害問題も発生していて。公害を防止しつつも産業発展を実現できたように、ITによる被害を防止しつつもIT化による便益を享受できるような社会が実現されればいいなと思います。

*1:日本では、プライバシーについて問題となった判例で、前科が問題となったことがありました。前科は公知の情報なのでプライバシー性がないのではないかという点が論点となったものですが、これは「時の経過」という概念を考えるべきとの議論がなされました。